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2006.01.24 (Tue)

先生

「もうこんな時間か。お前のおかげでまた遅くなったじゃねーか」
PM8時。
がらんとした教室に先生の声が響く。
「また家まで送ってね。先生」
私が机に座ったまま笑顔で言うと先生は呆れたようにため息をついた。
教室にはもう私達しか残っていない。
というか、もうこの教室以外はほとんど真っ暗のはず。
夜の学校。
普通なら不気味に感じるところだが、私の気分は最高だ。
「ほら。早く帰る支度しろ。オレは見たいドラマがあんだよ」
言いながら黒板に描かれた図形をかなり大雑把に消していく先生。
「一緒に見る!」
「ボケ。子供は早く寝ろ」
「子供じゃない!」
私はむっとして言う。
「オレから見たら十分子供だね」
言い返せなくて私は唸る。
25歳から見たら確かに私は子供だろうけど・・・。
「でも先生。私先生のこと諦めてないからね」
私が真剣な声で言うと、先生は黒板消しを置いてこちらを振り返った。
やっぱり不機嫌そうな顔。
私は構わず続ける。
「だって先生彼女いないんでしょ?私がなってあげるってば」
「それはどうも」
「じゃあっ」
期待の眼差しで私は机から立ち上がった。
「いい大学に受かったら考えてやる」
「ホント!?・・・でも、まだ1年以上先じゃん!そんなに待てない!!」
「んじゃダメだな」
そのまま、今度は教壇の上を片付けはじめる。
「何で今は考えてくれないの?」
「彼女の金で食ってる男なんてゴメンだ」
「何それ。意味わかんない」
「・・・お前やっぱ頭悪ぃな」
「それを良くするのが先生の仕事でしょ」
「こっちにも限界がある。つーか、お前ホント早くしろ。置いていくぞ」
言われて仕方なく私も帰り支度に取り掛かったのだった。

「寒っ」
外に出た途端、先生は素早くコートに手を突っ込んだ。
それを後方から見ていた私は思い切って言う。
「手も、繋いじゃだめ?」
すると先生はどきっとするような優しい目をして振り向いた。
そのまま私の頭をぽんぽんと叩いた。
「また子供扱い・・・」
「いいんだよ。子供なんだから。子供らしくしてなさい」
そして先生は頭にあった手を下ろして私の手をとった。
先生の手はあったかい。
同時に心の中までホンワカした。
「・・・子供は体温高いんだって」
私がボソっと言うと、先生は「?」という顔でこちらを見下ろした。
「ううん。なんでもない」
私は笑顔で言う。そして、
「ねぇ、先生。私たちの関係って、『師弟以上、恋人未満』って感じかな?」
言うと、先生はいきなり噴いた。
「なんじゃそら」
「だって友達じゃないし」
「だからって師弟以上って・・・どんなだよ!」
先生はそのまましばらく笑っていた。
「そんな笑わなくてもいーのに・・・」
私がむくれていると、先生は急に私の手を引っ張って自分の手ごとコートのポケットに押し込んだ。
びっくりして先生の顔を見上げると、先生は意地悪そうな笑顔で見下ろしてきた。
「この方があったかいだろ」
・・・ズルイ・・・。
私の気持ち、受け入れてくれないくせに、そうやって嬉しいことばっかしてくれて・・・。
「先生」
「ん?」
「約束ちゃんと守ってよ」
「約束?」
「さっきいい大学受かったら私のコト考えるって言った。先生があっと驚くような大学に受かってやるからね!ちゃんと守ってよ」
「さ~てね・・・いててっ」
ポケットの中で手を強く握ってやると先生は大げさに痛がった。
「お前なぁ、手追い出すぞ」
「ヤダ」
私はきっぱりと言う。
先生はそんな私を見て短く息を吐いた。瞬間空気が白くなって、消える。
そして、
「ま、がんばれや」
と一言。
その何気ない一言がどんなに私を元気付けるか、先生知ってる?
「はい!がんばってまっす」
得意げに言って、私はちょっと先生に体を寄せる。
まだ恋人じゃないのは寂しいけど、今のこの関係も好き。
師弟以上、恋人未満。
これが私たちの関係。


END.



読んでくださってありがとうございます!
第一のお相手は「先生」でした。
このお話は以前ある方に捧げたものを加筆修正したものです。
私も学生のころ先生を好きになったことがあります。
いいですよね、先生(笑)
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テーマ : 恋愛小説 ジャンル : 小説・文学

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