山を越えるとセデという小さな町があるのだという。
ラグはまずそこで傭兵を雇いたいらしい。
本人曰く、
「お前の歌は危なっかしくて使えねーし、いざってときにもう一人いた方が何かと助かる」
とのことだ。
…あの後、また泣かれたら堪らないと思ったのか、ラグは私の質問に一応全部答えてくれるようになった。
相変わらず仏頂面ではあったが…。
昨日私がいた城下町はユビルス。
あのお城はグラーヴェ城といい、この国を治めている王様が住んでいるらしい。
この国の名はランフォルセ。
そして、この世界はレヴール。
そう呼ばれている。
日が高くなり、服の下が汗ばんで来た頃ラグが休憩時間を作ってくれた。
すでに足が棒のようになっていた私は、多少抵抗はあったもののそのまま地面にへたり込んでしまった。
ラグからもらった初めて見る木の実をおっかなびっくり口に含んだときだ。
「念のため言っとくけどな。お前、もう人前では歌うなよ」
唐突に言われ首を傾げると、ラグは続けた。
「お前がいた、その…「ニホン」じゃどうだか知らんがな、この世界では歌は不吉だとされてる」
「…何それ?」
味がピーナッツに似ていた木の実を飲み込んで、聞く。
歌が不吉?
どういうことだろうか。いまいちピンとこない。
「そのまんまだ。街中で昨日みたいに歌ってみろ、速攻で追い出されるぞ」
「へ!?」
「あとお前が銀のセイレーンってことも絶対言うな。また昨日みたいなことになりたくなけりゃな」
放り投げた木の実を器用に口でキャッチしながら言うラグ。
「…その銀のセイレーンて何?何で私がそうなるの?」
この世界に来て何度も聞いた“銀のセイレーン”。
今の時点で何となくわかっているのは、私が使った魔法のような力。あれを持っているのが銀のセイレーンだということ。
それと髪の毛が銀色に変わることくらいだ。
なぜ皆それを見て驚くだけじゃなく、怖がるのかが不思議だった。
「“銀のセイレーン”は異世界から現れてこのレヴールを破滅させる存在と言われている。歌が不吉だとされるようになったのもそのせいだ」
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以下イラストです。
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