2006.06.02 (Fri)
異世界トリップ物語 ~My Favorite Song~ 4
夜の闇とは明らかに違う。何も見えない。
目を瞑っているのかと錯覚するほどの闇。
普段なら突然のことに取り乱しただろうが、今の今まで死の恐怖を間近に感じていたからか、私はさほど驚かなかった。
「魔導術!?」
対照に兵士達の驚きと焦りが混じった声が聞こえた。
(魔導術?)
聞きなれない単語に眉を寄せたその時、ぐんと腕を引っ張られた。
「走るぞ」
無理やりに立たされる格好になった私は聞き覚えのある声にハっとする。
あの牢屋で聞いた声だ。しかしまだ辺りは暗闇のまま。姿までは確認できない。
返事をする間も無くそのまま腕を引っ張られ、私はまだ覚束ない足を叱咤しどうにか走り出す。
「うろたえるな!娘が逃げた!」
先ほどの一番偉そうな兵士の十分に焦った声が背後で聞こえた。
とりあえずあの場は切り抜けられた。だがまだ気は抜けない。
見えないので感覚でだけだが、おそらく今私たちは城の裏手に向かっている。
何だかわからない違和感を覚えながらも私は必死で走る。
いつまでこの暗闇が続くのだろうと思ったそのとき、突然視界が開けた。
まず目の前に映ったのはブゥの後ろ姿。
(え?)
今自分をひっぱっている手を辿り私は目を見開く。
違和感の正体。
自分を今誘導しているのは、子供だった。
後ろで一つにまとめている黒髪が尻尾のように揺れている。
長髪だが格好で少年だとわかる。
少年の頭上を相棒だと言うブゥが飛んでいる。
驚きとともに私のなかに妙な安堵感が広がる。
子供だからといって頼りないとは思わなかった。
現にこうして助けてくれたのだから。
「あ、ありがとう!」
走りながら助けてもらったお礼を言う。だが、
「礼言ってる暇があんなら歌えよ!銀のセイレーン!!」
変声期前の子供の声で厳しく言い返されてしまった。
また聞いた「銀のセイレーン」という言葉に半ばうんざりする。
「私そんなんじゃないよ!勝手に周りが言ってるだけで・・・」
と、急に少年は立ち止まり小さく舌打ちをした。
つんのめりそうになりながら少年の頭ごしに前を見ると、こちらに走ってくる新たな追っ手が見えた。
NEXT
目を瞑っているのかと錯覚するほどの闇。
普段なら突然のことに取り乱しただろうが、今の今まで死の恐怖を間近に感じていたからか、私はさほど驚かなかった。
「魔導術!?」
対照に兵士達の驚きと焦りが混じった声が聞こえた。
(魔導術?)
聞きなれない単語に眉を寄せたその時、ぐんと腕を引っ張られた。
「走るぞ」
無理やりに立たされる格好になった私は聞き覚えのある声にハっとする。
あの牢屋で聞いた声だ。しかしまだ辺りは暗闇のまま。姿までは確認できない。
返事をする間も無くそのまま腕を引っ張られ、私はまだ覚束ない足を叱咤しどうにか走り出す。
「うろたえるな!娘が逃げた!」
先ほどの一番偉そうな兵士の十分に焦った声が背後で聞こえた。
とりあえずあの場は切り抜けられた。だがまだ気は抜けない。
見えないので感覚でだけだが、おそらく今私たちは城の裏手に向かっている。
何だかわからない違和感を覚えながらも私は必死で走る。
いつまでこの暗闇が続くのだろうと思ったそのとき、突然視界が開けた。
まず目の前に映ったのはブゥの後ろ姿。
(え?)
今自分をひっぱっている手を辿り私は目を見開く。
違和感の正体。
自分を今誘導しているのは、子供だった。
後ろで一つにまとめている黒髪が尻尾のように揺れている。
長髪だが格好で少年だとわかる。
少年の頭上を相棒だと言うブゥが飛んでいる。
驚きとともに私のなかに妙な安堵感が広がる。
子供だからといって頼りないとは思わなかった。
現にこうして助けてくれたのだから。
「あ、ありがとう!」
走りながら助けてもらったお礼を言う。だが、
「礼言ってる暇があんなら歌えよ!銀のセイレーン!!」
変声期前の子供の声で厳しく言い返されてしまった。
また聞いた「銀のセイレーン」という言葉に半ばうんざりする。
「私そんなんじゃないよ!勝手に周りが言ってるだけで・・・」
と、急に少年は立ち止まり小さく舌打ちをした。
つんのめりそうになりながら少年の頭ごしに前を見ると、こちらに走ってくる新たな追っ手が見えた。
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テーマ : 自作小説(ファンタジー) ジャンル : 小説・文学
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