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2016.12.24 (Sat)

クリスマス漫画



これの続きを4年ぶりに描きました。
(元のお話はこちら

よろしければどうぞー↓
♥ More..Open
23:42  |  【MFS】番外編?  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.12.03 (Sat)

My Favorite Song ~銀のセイレーンの歌~ 第五部 32-1

「ビアンカ!」
 彼女の姿が深い緑の間から見えてきて私は声を上げた。
 緑を抜けると彼女はその白く長い首をもたげて私たちを見下ろした。
 ――私、ラグ、セリーン、アルさんの4人と今はお休み中のブゥは一度城を出て彼女にお別れをしに来た。
 王子とクラヴィスさんも彼女に会いたがったけれど、今はあの部屋から離れられそうにないとお礼の言葉を言付かって来ている。
 でもその前に、彼のことを伝えなければならない。
「ごめんね、ビアンカ」
 私は彼女に近付きその身体に触れる。
 ひんやりとした冷たい感触がとても気持ちいい。
 彼女の赤い瞳を見上げて、私は言う。
「フォルゲンさん、連れて来られなかった」
 ビアンカはただじっとこちらを見下ろしている。
 その感情は読み取れないけれど、私は続けた。
「フェルクの皆が心配してるって話したよ。あとビアンカがここにいるってことも……」
 彼の固い表情と頑なな言葉が蘇る。
 とても言い辛いけれど、言わなければ。
「でも、帰れないって。フォルゲンさんね、ここで大事な人を見つけたんだって。だから、フェルクには帰れないって」
「ライゼは、ブライトと結ばれるべきだとも言っていたぞ」
 私の後ろにいたセリーンが後を続けてくれて、私はそうと頷く。
「『ブライトの方がライゼ様に相応しい』って……」
 彼女が、ライゼちゃんに彼のことをどう伝えるかはわからないけれど、どうかライゼちゃんがあまり悲しむことのないように。
 そう願いながら私はなるべく明るい声で続けた。
「フォルゲンさんね、この国でもお医者さんとして街の皆に慕われているんだって。あと、ブライト君がフェルクで頑張ってるって言ったらすごく嬉しそうにしていたよ」
 と、ビアンカがゆっくりとした動きでお城のある方角を見つめた。
「――だから、ビアンカ。ライゼちゃんにフォルゲンさんは元気だったからって伝えて」
 するとビアンカはもう一度こちらを見下ろし、その瞼を閉じた。
 まるで、「わかりました」――そう言っているように見えた。

 そして。
 いよいよ、ビアンカとお別れをしなければならない時が来た。

 私は彼女の硬い皮膚に額を付ける。
「ビアンカ、もうお別れだね……。こんなに遠くまで本当にありがとう」 
 初めて会ったとき、おっかなびっくりその身体に触れたことを思い出しながら私は言う。
(ライゼちゃんに鱗を掴んでって言われて、びっくりしたっけ)
 飛行中最初は心許なかった背中の上も、今や寝てしまえるほどになってしまった。それだけ彼女の背中は心地良かった。
 彼女との思い出が次々と蘇ってくる。
 突然冬眠してしまってものすごく心配したことや、それでも私を助けに来てくれたこと。
「私がフィエールに連れていかれたとき、ビアンカ寒くて大変だったのに助けに来てくれて本当に嬉しかった」
 絶望の中この白く大きな姿を目にしてどんなに安心したか。
 ライゼちゃんとは違って言葉を交わすことは出来ないけれど、彼女はいつも優しかった。
「全部、ありがとうビアンカ。あなたと旅したこと、絶対に忘れない」
 まずい。声が震えてしまう。
 誤魔化すように私は顏を上げた。
「ツェリウス王子とクラヴィスさんもね、ビアンカにありがとうって。本当に助かったって言ってたよ」
 ビアンカはそんな私を優しく見下ろしていた。
 と、後ろに居たセリーンが私の横に並び同じようにビアンカに触れた。
「私からもありがとう、ビアンカ。お前のお蔭で大分旅が楽になった。元気でな。ライゼ達にもよろしく伝えてくれ」
 そうしてセリーンはビアンカの身体を抱き締めた。
 するとまた。ビアンカは頷くように一度瞼を落とした。
 次に前に出たのはアルさんだった。
「ビアンカ。ありがとな。この中じゃ俺が一番付き合い浅いけどよ。お前さんが居てくれてほんと助かったぜ。いつか俺もフェルクに行くからな。そん時はよろしく頼むぜ」
 そうしてアルさんも彼女の身体を抱き締めた。
 私は後ろを振り返る。
 次はラグの番だ。
 飛行中、なんだかんだと一番ビアンカに話しかけていたのは彼だ。
 なのにラグはビアンカを見てはいなくて。
「ラグ?」
 私が声を掛けるとラグは徐に頭の後ろに手を回した。そして。
「ブゥ、起きろ」
 彼は手の中で寝ているブゥに話しかけた。
 彼が日中にブゥを起こすのを見るのはこれが初めてだ。
「そっか、ブゥにもお別れさせないとな」
 アルさんが微笑ましげに言うのを聞いて、そうかと思う。
(サイズは全然違うけど、同じモンスターだもんね)
 何度かラグが声を掛けるとブゥは伸びをするように翼を広げた。起きてくれたみたいだ。
 ラグが小声で何か言うと、ブゥは彼の手の中から離れ、ビアンカの目の高さまでふわふわと飛んで行った。
 お互い見つめ合っている様はとても可愛らしくて、思わず笑みがこぼれる。
 同じように笑ったセリーンが言う。
「何か話しているのかもな」
「うん」
 言葉がなくても同じモンスター同士。目と目で何か伝え合っているのかもしれない。
 それから満足したのかブゥは戻って来てラグの頭に乗った。
 いつの間にか私の隣にいたラグがビアンカを見上げ口を開く。
「長い間付き合わせて悪かったな。助かった」
 それだけ言うと、ラグはビアンカに短く手を触れ、そして離れた。
(え?)
 危うく声が出てしまうところだった。
 それだけ……?
 でもビアンカが優し気に目を細めたのを見て、あぁこれでいいのだと思った。

 
 ビアンカがばさりと翼を広げて周囲に強い風が巻き起こった。
 彼女が地面を離れるときいつもならその背中に乗っているのに、今日は彼女を見送らなくてはならない。
 こうして見上げると改めて彼女は大きく、そして美しかった。

「さようならビアンカ。本当にありがとう!」

 風音の中、そう叫んだときだった。
 彼女が薄く口を開ける瞬間を初めて見た。

“――アリガトウ――”

 そんな柔らかな声が、聞こえた気がした。



 彼女の姿が空の色に溶けていくのを見送りながら私はぽつりと呟いた。

「……私、今ビアンカの声が聞こえた気がした」
「私もだ」
「俺も」
「……」
「ぶ」

 私たちは呆然と顔を見合わせてから、もう一度高い空を見上げた。
 もうそこに彼女の姿は無かったけれど、かわりに白く長い雲が一本悠々と浮いているのを見て、私は笑顔で大きく手を振った。
 

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13:43  |  小説【My Favorite Song】  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.09.25 (Sun)

My Favorite Song ~銀のセイレーンの歌~ 第五部 31-3

(絵って、エルネストさんがあんなふうに絵に描かれてたってこと?)
 大きな絵の中で微笑む王様が、エルネストさんの笑顔とダブって見えた。
「どこで見たんだ!」
 掴みかからんばかりの勢いで訊くラグ。
 私も固唾を呑んで彼女の次の言葉を待つ。
 セリーンがゆっくりと口を開く。
「私の家だ」
「セリーンの?」
 思わず訊き返すと彼女はあぁと頷き、そこで漸く私たちの方を見た。
「収集家だった父のコレクションの中に、確かにあの男の絵があった」
 その言葉に驚く。
 絵のことよりも、セリーンの口から“父”という言葉が出たことが、とても意外だった。
 出会った時から彼女は完全に自立した大人の女性で、だからだろうか。
 そうか、セリーンにもお父さんがいるんだ……と、そんなごく当たり前なことに驚いてしまった。
「お前の家はどこにある」
 ラグの続いての問いに、セリーンは一呼吸してから答えた。
「エクロッグだ」
「エクロッグ?」
 そこで声を上げたのは王子だ。
 なんだか神妙な顔つきで彼は言う。
「エクロッグは、確か……」
 そして確証を求めるようにクラヴィスさんを見下ろした。
 その視線を受けたクラヴィスさんは頷き、後を続けた。
「はい。このクレドヴァロールの北方にあった小国ですね」
 ということはセリーンの故郷はここからそう遠くないということだ。それよりも。
「あった……?」
 その言い方に引っ掛かりを覚えた。
「あぁ、今はもう無い国だ」
 セリーンが目を伏せながら言う。
「大戦中に侵略を受けてな。……私がまだ12かそこらの頃だ。私はなんとか逃げ延びたが、多くの国民が殺された。それから一度も帰っていない」
 さらりと語られた凄惨な過去に怯んでしまう。だがラグは全く気にする様子なく更に問う。
「ってことはその絵は」
「あぁ、その後どうなったのかは全くわからん。燃やされたか、或いは売られてしまったか……」
「お父さんは?」
 嫌な予感はしているのに、口から出てしまった。
 するとセリーンは寂しそうに微笑んだ。
「父もその時にな。家族の中で生き残ったのは私だけだ」
「ご、ごめん!」
「いや、もう昔のことだ」
 思わず頭を下げた私の肩にセリーンは気にするなと手を乗せた。
(やっぱり訊かなきゃ良かった)
 強くて優しいセリーン。
 きっと彼女は私には想像もつかないような、辛い想いをたくさんしてきている。
 と、そんなときだ。
「――ちょ、ちょっと待ってくれよ」
 見ると、アルさんがなんだか難しい顏で眉間を押さえていた。
「セリーン、その絵は確かにあの兄ちゃんだったのか?」
 ぴくりとセリーンの眉が上がる。
 アルさんがセリーンの言うことを疑うなんて珍しい。
「あぁ。私もあの男を見たのは一度だけだが、あの額の紋様と言い間違いない。確かにあの男だった」
「でもセリーンがその絵を見たのって10年以上前なんだろ?」
「あぁ、国を出たのは14年前だ。……なんだ、私の記憶が信じられないのか」
「いや、だってよ。確かにあの兄ちゃんを描いた絵だったとして、14年前の兄ちゃんじゃねぇとおかしくねーか?」
「!!」
 皆が一斉に息を呑む。
「俺も見たのは一度だけだけどよ、あの兄ちゃんどう見たって20歳かそこらだろう。14年前っていったらまだ子供のはずだぞ」
「……それは、そうだな。いや、しかし私の記憶では確かに……」
 流石のセリーンも声のトーンを落とし、記憶を辿るようにもう一度王様の肖像画を見上げた。
 私もその視線を追いながら、彼の綺麗な笑顔を思い浮かべる。
(エルネストさん……)
 なんだか、気付いてはいけなかったことに気付いてしまったような、罪悪感にも似た思いに胸がざわついた。
 と、肘掛けに頬杖をついていた王子がふぅと息を吐いた。
「妙な話だな。その男、本当に存在しているのか?」
 どくん、と心臓が大きな音を立てた。
 ――いつも、幽霊のような姿で現れる彼。
 つい昨日だって彼は私に笑いかけてくれた。
 “きっともうすぐ会えるよ”
 そう言って、微笑んでくれた。
 彼が、もうこの世に存在していない人だったとしたら……。
 ぎゅっと強く自分の腕を握る。
 やっぱり気付いてはいけなかった。
 考えてはいけないと思っていたひとつの可能性に、行き着いてしまった。


 しんと静まり返った広間に、クラヴィスさんの少し焦りを帯びた声が大きく響く。
「例えば兄弟ですとか、親ってことも考えられるのではないですか?」
(兄弟か、親……)
 確かにそのほうが有り得そうなのに、なぜだか全くしっくりこない。
 他の皆も同じようで、誰も何も言わずまたしばらく沈黙が続いた。
「……どちらにしろ、行って確かめるしかねぇな」
 ラグの溜息交じりの声にセリーンが驚いたように振り向く。
「エクロッグへか?」
「ここからどのくらいの距離だ」
「……ビアンカはもう帰すのだろう? なら荒野をひたすら歩いてざっと半月はかかるぞ」
 そうだ。この後、もうビアンカとはお別れなのだ。
(荒野を、半月……)
 心の中で反芻した言葉が足腰に重く圧し掛かった気がした。
「でしたら、徒歩で行くより船で海を渡ったほうが近道ではないですか?」
「船で?」
「はい」
 クラヴィスさんが笑顔で頷く。
「そうか、サエタ港を使うのか」
 セリーンも気が付いたふうに声を上げた。
 私には全然わからないけれど、ラグもアルさんも理解したようだ。
「えぇ、ヴァロール港から船に乗れば、少しは距離が縮まるかと。――殿下」
 見上げた先の王子があぁと頷き、崩していた姿勢を正した。
「船はこちらで用意しよう。そのくらいはさせてくれ。いつ頃出発する予定だ?」
「この後準備ができ次第、すぐだ」
 ラグのいつもの迷いない声音に、王子の口がぽかんと開くのを見た。


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